再度の延期
「先週、あるステークホルダーからこの作業に関する新たな問題が提起され、それを我々が完全に検討するには、さらなる精査が必要となる。我々が提案したアップグレードは不可逆的で繊細なものであるため、我々はこの投票を延期するという難しい決断を下した」と財団はXに投稿した。
財団は決定は「予期せぬもの」だとし、事態を謝罪した。だがこれは、プロトコルの取引手数料の一部をトークン保有者に振り分ける「手数料切り替え」を行うかどうかの投票が延期された初めての事例ではない。
また、トークン保有者の利益がユニスワップ(Uniswap)の他のステークホルダーの利益と対立しているように思われる事態が発生したのも、今回が初めてではない。
「重大な変更があれば、コミュニティにお知らせし、将来の予定について確信が持てた時点で皆さんに報告する」と財団は付け加えた。
2020年の「DeFiの夏」の余波の中で、ガバナンストークンSUSHIを発行し、すぐに流動性を集め始めたスシスワップ(Sushiswap)による「ヴァンパイア・アタック(ユーザーにより良いインセンティブを与えることで、新規プロジェクトが既存プロジェクトからユーザーを奪うこと)を食い止めるために、ユニスワップはUNIトークンを発行した。
スシスワップはDAOによって管理され、トークン保有者に取引手数料を割り当てていたことから、比較的コミュニティとの協調性が高いと見られていた。
ユニスワップのバージョン2には、流動性プロバイダー(ユニスワップで取引されるトークンを提供する人)に支払われる取引手数料の0.3%を分割し、0.25%を流動性プロバイダーに、残りの0.05%をUNIトークン保有者に支払うことを可能にするコードが含まれていた。しかし、「手数料切り替え」は実行されなかった。
提案がもたらす懸念
バージョン3のローンチに伴い、手数料切り替えの実行について再び話が持ち上がった。ユニスワップのフロントエンド・インターフェースであるOkuを手がけるGFXラボ(GFX Labs)は、ユニスワップV2のいくつかのプールでプロトコルの手数料分配をテストする計画を提案し、多くの注目を集めた。
しかし、流動性プロバイダーや流動性をユニスワップから遠ざけてしまうかもしれないという懸念や、法的な懸念もあり、最終的に話は頓挫した。
当時の主な懸念の1つは、手数料スイッチが実質的にトークン保有者に収益ベースの配当の一種を支払うことになることから、UniDAOに税法や証券法に関する影響を及ぼす可能性があるということだった。
ユニスワップ財団が投票を再度延期することを決定した際、どのような懸念に対応したのかは正確にはわからない。著名な暗号資産(仮想通貨)関連の法律専門家であるガブリエル・シャピロ(Gabriel Shapiro)氏は、これはDeFiプロトコルがトークン保有者を「二級市民」として扱い、その欲求をより少数のステークホルダー・グループに従属させた新たな事例だと書いている。
昨年末、ユニスワップ・ラボ(Uniswap Labs)がフロントエンドのウェブサイトとウォレットに0.15%の取引手数料を課し、開発グループが直接収益化を始めて図った際にも同様の議論が起きた。この手数料はユニスワップ・ラボが管理するプロダクトにのみ適用され、取引所プロトコル自体には適用されなかったが、1億6500万ドル(約257億円、1ドル156円換算)を集めた後に行われた。
完全に斜に構え、UNIトークン保有者に報酬を与えるための手数料の切り替えが決して実行されないと考える理由はない。
ユニスワップ・ラボとUNIトークン保有者は、それぞれ独自の利益を持つ別個の存在だ。理想的には、両者ともプロトコルにとって最善のことを行うという点で足並みが揃うだろう。
しかし、DeFi全体で学ぶべき教訓があるとすれば、それはトークン保有者が常に最終的な決定権を持つわけではないということだ。
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