SEC、ブローカーのステーブルコイン保有に関する非公式取り扱い変更が示す影響とは

米証券取引委員会(SEC)は、ステーブルコインを自己資本として認める方向で非公式な政策変更を進める「Project Crypto」の作業を継続している。

SECが発行するFAQ(よくある質問)文書の修正により、SECの規制対象であるブローカーディーラーは保有するステーブルコインを規制上の自己資本(regulatory capital)として計上できるようになった。

この変更はSECの「Broker Dealer Financial Responsibilities(ブローカーディーラーの財務上の責務)」FAQにおける小規模な追記として行われたが、その影響は非常に大きい。トランプ政権下のCrypto Task Force設置以降、SECは非公式ガイダンスや業界との書簡、スタッフ声明などを通じて暗号資産に対する方針を段階的に変化させてきた流れにも合致する。

今回、ステーブルコイン(CircleのUSDCやTetherのUSDTなどの米ドル連動トークン)保有に対し、企業が適用すべき「ヘアカット(haircut)」の割合を明示する新たな質問(No.5)が追加された。回答では2%とされ、従来の100%ヘアカット(すなわち資本計算上ゼロ扱い)とは対照的に、企業は保有額の98%を自己資本に含められることになる。

デジタル商工会議所(Digital Chamber)のCEOであるコーディ・カーボーン氏は「このガイダンスは新たなルールの制定ではないが、現行証券法の枠組み内でコンプライアンスを確保しながら事業活動を行う企業の不確実性を軽減するものだ」とコメントした。

これによりステーブルコインは他の金融商品と同様の扱いを受けることになる。

デジタル通貨グループ(Digital Currency Group)の取締役で暗号資産教育事業を運営する元教授のトーニャ・エバンス氏はXへの投稿で、「企業のバランスシート上でステーブルコインがマネー・マーケット・ファンドのように扱われることを意味する。従来はブローカーディーラーが資本計算の際にステーブルコイン保有をゼロとしていたため、財務上のペナルティがあったが、それが終わった」と記した。

以前はSECによる厳格な制約により、これらブローカーディーラーはトークン化証券のカストディや取引仲介を円滑に行えなかった。しかし今回の指針に沿うことで、流動性提供や決済支援、トークン化金融の推進が容易になる可能性がある。

Ethena Labsの副法務顧問ラリー・フロリオ氏はLinkedIn上で「ロビンフッドからゴールドマン・サックスに至るまで、あらゆる企業がこの資本計算を基に活動している」と述べ、ステーブルコインが運転資本(working capital)になったと説明している。

SEC委員のヘスター・ピアース氏は同タスクフォースを率いており、今回の変更に関し声明を発表した。ピアース氏は、ステーブルコインの活用により「ブローカーディーラーがトークン化証券やその他の暗号資産に関わる広範な事業活動に従事するのが現実的になる」と指摘し、既存SEC規則の「決済用ステーブルコインの考慮を含めた改正」についても検討したいと述べた。

ただし、非公式スタッフ方針は発出も撤回も容易であり、正式な規則ほどの効力や法的保護を持たない点は弱点である。

SECは近時暗号資産に関するルール策定も進めているが、まだ公表には至っていない。通常この作業は数カ月、場合によっては数年を要し、正式ルールであっても新たな指導部の方針変更で覆される可能性がある。このため暗号資産支持者は、昨年成立の「米国ステーブルコインの指針および国家イノベーション確立法(GENIUS法)」のように、政府のデジタル資産対応を議会立法で固定することを求めている。

【更新】2026年2月20日 22:23(UTC):Digital Chamber CEOのコメントを追記。