シルバーゲート銀、約100億円でSECなど規制当局と和解

  • シルバーゲート銀行(Silvergate Bank)の親会社は、適切なマネーロンダリング防止プログラムを維持せず、プログラムの有効性について誤解を招くような情報開示を行ったとされる件について、米証券取引委員会(SEC)、連邦準備制度理事会(FRB)、カリフォルニア州金融保護革新局(DFPI)と和解した。
  • SECはシルバーゲートの元幹部も起訴。前CEOのアラン・レーン(Alan Lane)氏と前COOのキャスリーン・フレイアー(Kathleen Fraher)氏は和解に合意し、前CFOのアントニオ・マルティノ(Antonio Martino)氏は容疑を否認した。

2023年に破綻し、業界の銀行危機を増幅させた暗号資産(仮想通貨)フレンドリーな銀行の親会社、シルバーゲート・キャピタル・コーポレーション(Silvergate Capital Corp.:SCC)は、内部管理の失敗と投資家への不適切な情報開示に関する米連邦政府とカリフォルニア州の規制当局からの告発について和解するため、6300万ドル(約102億円、1ドル162円換算)を支払うことに合意した。

SECは7月1日、シルバーゲート銀行が、有効な銀行秘密法/マネーロンダリング防止(BSA/AML)プログラムを持っていないにもかかわらず、一般市民や株主を欺いたとして、親会社のシルバーゲート・キャピタル・コーポレーションの前CEOのアラン・レーン氏、前COOのキャスリーン・フレイアー氏、前CFOのアントニオ・マルティノ氏を提訴。FRBとDFPIも同様に同社を告発した。

シルバーゲート、レーン氏およびフレイアー氏は、SECの申し立てを認めることも否定することもなく、罰金を支払うという和解に合意し、2人は他の上場企業の役員または取締役になることを5年間禁止されることにも合意した。シルバーゲートはFRBおよびDFPIとも和解した。

シルバーゲートの罰金には、FRBからの4300万ドル、同銀行の内部取引の管理方法にも不備があったとするDFPIからの2000万ドルが含まれている。SECも5000万ドルの罰金を課したが、こちらは罰金の合計金額には含まれない見込みだ。

和解には裁判所の承認が必要であり、SECはプレスリリースの中で、シルバーゲートが銀行監督当局に支払う金銭的罰金によって、SECへの罰金は相殺される可能性があると述べた。

マルティノ前CFOは、弁護士からの声明を通じて申し立てを否定し、これらの申し立ては2022年のある四半期に関連したもので、「判断主導の」決定に関するものだと述べた。

提訴の内容

「2022年11月までの数回の機会において、レーン氏とフレイアー氏、そして彼らを通じてSCCは、シルバーゲート銀行のBSA/AMLコンプライアンスプログラムに重大な欠陥があることを知った。さらに、サンフランシスコ連邦準備銀行(FRBSF)を通じたFRBによるシルバーゲートに対する複数の調査結果を通じて、レーン氏とフレイアー氏は同行のBSA/AMLコンプライアンスプログラムに重大な欠陥があることを知っていたはずだ」と訴状には記されている。

さらにSECは訴状の中で、シルバーゲートが主要顧客で、2022年11月に破産を申請したFTXによる約90億ドル相当の不審な送金を検知できなかったと主張した。

「2021年と2022年のほとんどの期間、同行はその主要商品である『シルバーゲート取引所ネットワーク:SEN』の適切な自動監視を行っていなかった。SENは、同行の暗号資産関連顧客間で資金を移動させるための重要なメカニズムであり、暗号資産関連顧客を惹きつけるように設計されていた。しかし、同行はSENで発生した約1兆ドルの銀行取引について、不審な動きがないかを適切に、あるいは自動的に監視することを怠った」(訴状)

シルバーゲートのチームは、政府の調査官からその取り組みが不十分であるとの連絡を受けたが、それでも四半期報告書や年次報告書(「10-Q」および「10-K」フォーム)ではリスク要因がなかったと主張したとされる。

2021年に提出された四半期報告書では、一部の暗号資産顧客のために銀行が「高まったリスク」に直面していることは「認めていた」が、銀行秘密保護法のコンプライアンスに関連する具体的な欠陥を幹部が認識していたことは公表していなかった。

シルバーゲートの広報担当者はCoinDeskに対し、今回の和解は同銀行が現在進めている清算に向けたプロセスの一環であるとして、次のように述べた。

「2023年3月上旬、シルバーゲートは政府の支援を受けずに自主的に清算するという責任ある決断を下した。2023年11月時点で、すべての預金は顧客に返済され、シルバーゲートはその後すぐに業務を停止した。本日発表された和解は、シルバーゲートの銀行認可の返上を促進し、同行が引き続き秩序ある清算を行う一環であり、FRB、DFPI、SECによる調査を成功裏に終結させるものだ」

任意清算

シルバーゲートは、大手暗号資産企業御用達の銀行だったが、業界に吹き荒れる壮絶な逆風に屈し、いわゆる「暗号資産の冬」に閉鎖された3つのテクノロジー関連の金融機関の1つめとなった。他の2行(シリコンバレー銀行とシグネチャー銀行)は米国当局に差し押さえられ清算されたが、シルバーゲートは政府の介入もなく、預金者への返済のために連邦政府の支援を必要とすることなく閉鎖に動いた。

シルバーゲートと他の2つの金融機関の破綻は、アメリカの銀行に数カ月に及ぶ混乱を引き起こし、暗号資産の人気がさらに低下するなか、暗号資産関連企業はサービスを提供してくれる金融機関を求めて奔走することになった。

シルバーゲートは、小さなコミュニティバンクから暗号資産セクターの主要な金融パートナーになる急成長を遂げたが、その転落はさらに早かった。

同行の閉鎖は、暗号資産業界に賭けていた同行が、サンフランシスコ連邦住宅貸付銀行からの立替金を返済するための現金を調達するため、有価証券の売却を加速させたことが2023年3月に提出された有価証券報告書によって明らかになったことがきっかけとなった。

しかし、2022年の最後の数カ月に暗号資産関連顧客から80億ドル以上の預金を失っており、警告の兆候はそれ以前からあった。

FRBの監察官は2023年10月の報告書で、シルバーゲートの経営陣は「無能」であり、担当者は事業で起こっている事態に対応できなかったと結論づけている。

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