Keyrockの最新報告によると、ステーブルコインを活用したブロックチェーン決済が、従来のカード決済が対応しづらいマイクロペイメント領域において、AIエージェントの主要な決済手段として急速に普及しつつあることが明らかとなった。
同報告では、AIエージェントがオンライン上で自立的に支払いを実行する市場はまだ小規模であるものの、世界有数のテクノロジー企業、決済企業、そして暗号資産関連企業が既にその基盤構築にしのぎを削っている状況が紹介されている。
Keyrockは、2025年5月から2026年4月の期間中、AIエージェントがブロックチェーン決済基盤を介して約1億7600万件の取引を行い、7300万ドル以上の決済を実施したと推定している。
ただし、この取引量は伝統的な金融(TradFi)と比較すると微々たるものであり、例えばVisaは単独で年間14.5兆ドルの取引を処理している。しかし、報告書は金額規模よりもむしろインフラ整備の速さにこそ価値があると指摘。Coinbase(COIN)、Stripe、Google(GOOG)、Visa(V)などのグローバル企業が相次いでマシン間決済のシステムを構築している。
エージェント型決済の基本コンセプトは、人間が管理する定期購読やアカウントを介さずに、ソフトウェアが自律的にデジタルサービスを消費し支払いを行うことにある。例えば、AIトレーディングエージェントはマーケットデータやクラウドコンピューティング、AIによる分析を、一日中非常に小さな単位で継続的に購入し、都度人間が支払い承認をする必要がない。
このような特徴が、エージェント型決済市場の大幅な成長見込みの背景となっている。報告書では、Gartnerが2028年までにAIエージェント経由の購入総額が15兆ドルに達すると予測し、McKinseyは2030年までに小売のエージェント型コマース市場が3兆~5兆ドル規模に成長すると見込んでいることを示している。
これらの予測は、ステーブルコインが普及期に示した成長率をも上回る勢いだが、現時点ですでにインフラ展開のスピードにより市場は実験段階を脱しつつあると報告書は分析している。
暗号資産ネイティブの有力システムであるCoinbaseのx402プロトコルは、AIエージェントがブロックチェーン分析やクラウドインフラといったサービスの支払いをアカウントや定期購読を作成せずにUSDCで直接行うことを可能にしている。
また、StripeはTempoブロックチェーンを利用し、Machine Payments Protocol(MPP)という競合フレームワークを開発。GoogleはAIエージェントの代理支払い承認に焦点を当てたAP2システムを導入し、VisaはAI主導コマース向けにトークン化された認証情報を活用しカードネットワーク拡張を推進している。
暗号資産決済基盤とステーブルコインは決済レイヤーの新たな中心として台頭しており、経済的な要因もそれを支えている。
報告書によれば、エージェントによる取引の約76%はカード決済に一般的な30セントの固定手数料の下限を下回っている。ほとんどの決済額は1~10セント程度であり、従来の決済基盤はデータやAI推論、APIアクセス等を自動購入するソフトウェアエージェントには実用的ではない。一方、BaseやTempoなど一部のブロックチェーン上のステーブルコイン決済手数料は1セント未満に抑えられている。
現在、機械間支払いの98.6%はCircle(CRCL)が発行するステーブルコインUSDCで行われている。これによりCircleの暗号資産決済分野における地位は強固となる一方で、単一発行者への依存リスクも生じている。
成長に対する制約要因としては規制が挙げられる。報告書によると、欧州のMiCA、米国のGENIUS Act、EUのAI法はいずれも2026年中頃に施行される見込みだが、これらの規制は自律的な機械間取引、責任問題、エージェントの身元に直接言及していない点が指摘されている。
