ニューヨークライフ・インベストメント・マネジメント(NYLIM)のマルチアセットソリューション責任者トーマス・サイ氏は、トークン化技術が従来の金融では実現困難な複雑なポートフォリオ構築を可能にすると指摘した。
トークン化の推進者たちは、従来の資産をブロックチェーン上に移す最大の利点を、決済の迅速化、24時間取引の実現、分散型金融(DeFi)におけるトークン利用などに求めることが多い。
しかし、サイ氏はCoinDeskのインタビューで、ブロックチェーン技術の最大の可能性は資産運用におけるポートフォリオ構築手法の再設計にこそあると述べた。同氏のチームは、保険会社ニューヨークライフが運用する総額8,070億ドルの資産のうち約110億ドルを担当している。
将来的にブロックチェーン技術は、資産運用会社が個々の投資家向けにカスタマイズされたポートフォリオを大規模に構築することを可能にするとサイ氏は解説し、現状の金融システムではその実現が難しいと強調した。
「我々は資産運用の未来はカスタマイズ化にあると考えている。スケールでそれを実現できるのはブロックチェーンのみだ」と同氏は述べている。
こうした見解は、ウォールストリートにおけるブロックチェーン活用の拡大のなかであまり注目されてこなかったトークン化の応用事例に光を当てている。銀行や資産運用会社、市場基盤事業者は、マネーマーケットファンド、プライベートクレジット、株式のトークン化を積極的に進めており、ブロックチェーン技術が金融の基盤インフラの近代化を促すことが期待されている。シティは、現在300億ドル規模のトークン化された現実資産(RWA)市場が2030年までに5.5兆ドルに拡大すると予測している。
NYLIMはトークン化に積極的に取り組む資産運用の大手として、Centrifuge(CFG)と提携し高利回りの社債戦略の一部をオンチェーン化する動きを見せた。同社にとってトークン化は、既存ファンドの単なるブロックチェーン版を作ることよりも、ポートフォリオ組成プロセスの効率化を重視した取り組みである。
サイ氏は、カスタマイズされた投資戦略はETFや債券、プライベートクレジット等の複数資産の組み合わせにより運用が複雑化し、個別最適化を大規模に実現するのが困難になっていると説明した。
「最終的には、カスタマイズ機能を資産そのものに組み込み、異なる資産に伴うオペレーションがカスタマイズに依存しない形にしたい」と語っている。
トークン化はさらに、移管代理業務や決済、その他のバックオフィス業務の効率化をも促し、投資家に還元されるコスト削減効果をもたらす可能性もある。
「もしコストを10~20%削減できれば、それがクライアントにより良い成果として反映されるだろう」とサイ氏は述べた。
DeFiへの期待
サイ氏によると、ステーブルコインは伝統的な金融機関とオンチェーン環境との間をつなぐ最初の実用的な架け橋となった。ステーブルコイン市場は3,000億ドル超に成長し、越境決済でもますます活用されている。
銀行や決済企業、フィンテック企業がステーブルコインを利用した越境決済や財務管理に取り組むなか、多くの機関は将来的にキャッシュを保有するだけでなく、利回りを生むトークン化された機関向け資産の獲得を目指す動きが広がると見られる。
「過去2年間で最も大きな解放の一つはステーブルコインの普及であり、これが機関投資家のオンチェーン移行の入り口となった」とサイ氏は語った。
こうした動きが今後数年でトークン化された投資商品の需要拡大を後押しすると同氏は予測している。
NYLIMはDeFiの研究も進めているものの、サイ氏は機関投資家の広範な参加には、トークン化された担保、中央清算機関やプライムブローカーなどの成熟したインフラが必要だと指摘した。
「DeFiにも有望な活用ケースはあるが、機関市場での本格的な普及にはもう少し時間がかかるだろう」との見解を示した。
