MiCA規制強化でEU内暗号資産業界が縮小の可能性、スイス系ウェルスマネージャーが指摘

スイス拠点の暗号資産ウェルスマネージャーSwissBorgは、MiCA認可の取得を受け、ドイツ、イタリア、スペインなどでの事業拡大を目指すとともに、欧州事業の拠点をフランスへ移転する準備を進めている。

欧州連合(EU)が導入した暗号資産市場規則(MiCA)は、域内での事業展開に新たな機会と課題をもたらし、地域のデジタル資産業界の構造変化を促しているとSwissBorgは説明する。

登録ユーザー数100万人、運用資産残高(AUM)13億ドルを誇る同社は、MiCAライセンスの獲得を足がかりに、欧州規制下のデジタル資産市場での役割強化を図る。

SwissBorgの最高執行責任者ジェレミー・バウマン氏はCoinDeskの取材に対して、「暗号資産ブローカレッジの経済性は、市場が不調な局面で厳しくなることがあるため、一部のグローバルプラットフォームは資本や運営リソースの配分を見直す可能性がある」と述べた。

さらに同氏は、「市場は時間の経過と共に、少数精鋭でより強靭なプレイヤーで構成されるようになるだろう」と指摘し、GeminiのEU撤退に触れつつ、「MiCAは欧州顧客へのサービス提供に必要な規制および運営水準を引き上げており、軽量な体制の事業者の減少を促している」と説明した。

また、グローバル取引所のEUでの存在感縮小によって、「他の欧州プレイヤーに自らの地位を強化する機会が生まれる」とバウマン氏は語った。

SwissBorgは2025年9月に、利用者の1%未満に影響を及ぼしたとされるエクスプロイト被害を経験している。自社によると、SOL Earn戦略用の外部ウォレットから192,600 SOL(約4,150万ドル相当)が盗まれた。この事件は提携先APIの侵害が原因で、同社のプラットフォーム自体がハッキングを受けたわけではないと説明している。

利回り商品とステーキングの将来性
バウマン氏は利回り商品やステーキング商品が今後、より明確な情報開示、強固なリスク管理、そして標準化された構造へと進化すると見通している。

「ステーブルコインに関する規制枠組みはより詳細化しており、これが特定の利回りモデルの設計や流通方法に影響を与えるだろう」とDefiLlamaのデータによる総預かり資産(TVL)が約8億ドルのSwissBorg COOでもあるバウマン氏は述べる。

また、規制の明確化が機関投資家の参入を後押しする可能性も指摘した。ただし、現時点で欧州のデジタル資産市場は主に個人投資家主導であると強調している。

「従来の金融機関は三役割すべてを担うことが可能だ。彼らは強い流通力と規制遵守の専門性を持っており、ある領域では競合となるものの、同時に協業機会も存在する」とバウマン氏は述べた。

EU規制当局はステーブルコインの明確なルール策定を模索中
バウマン氏はステーブルコインや利回り商品に関する現在進行中の政策論議にも言及。多くは米国で進んでいるが、欧州の規制当局は発行、準備資産、流通に関する明確なルール作りに重点を置いていると述べた。

「市場の成熟に伴い、利回りソリューションはイノベーションと金融安定性のバランスを保ちつつ、より透明で適切に設計されたモデルへと進化する可能性が高い」と同氏は話す。

SwissBorgはフランスでの認可を取得しており、同国は欧州内でも厳格な規制管轄の一つとして広く認識されている。同認可は同社の内部統制、リスク管理体制、利用者資産の保護体制を裏付けるものと同社は説明する。

同社は今後数カ月以内に、運用面の準備が整い次第、現行のエストニア法人から新たに認可を取得したフランスの暗号資産サービスプロバイダー(CASP)法人へ欧州事業を移管する計画だ。移管対象は主にドイツ、オランダ、イタリア、スペインなど主要な暗号資産市場となる。