Rippleは、将来的に量子コンピュータによって秘密鍵が解読されるリスクに備え、XRP Ledgerを量子コンピュータ対応にするための4段階計画を発表した。
決済に特化したブロックチェーン企業のRippleの開発者は、ウォレットやトランザクションを保護する暗号技術が将来的に不足する可能性に迅速に対応すべく、XRP Ledgerの準備を進めていると述べている。
Rippleのエンジニアリング部シニアディレクター、Ayo Akinyele氏はCoinDeskに対し、「目標は量子コンピュータが差し迫った脅威となるのを待つのではなく、重要な金融インフラに依存するシステムや資産、ユーザーに影響を与えないよう、十分前から進化させることにある」と語った。
理論的には、十分に強力な量子コンピュータが現行のブロックチェーンや銀行システムで用いられる数学的保護を破る可能性があり、攻撃者は公開情報から秘密鍵を逆算できる可能性が指摘されている。この将来起こりうる時点は「Qデイ」と呼ばれている。
しかしRippleはこの問題を、期限間際のソフトウェアパッチではなく、長期的なインフラ整備プロジェクトとして位置付けている。
Akinyele氏は「金融システムは当初、量子コンピュータを想定して設計されておらず、量子技術の進展に伴い、取引、アイデンティティ、資産、機密情報の保護手法を再検討する必要に迫られている」と指摘した。
■4段階の計画
Rippleは、重大な量子脅威の前後数年間に適用するXRP Ledgerの準備に関して、4段階の計画を示している。最初はネットワークの影響範囲を評価し、次に従来の処理負荷に耐えられる代替暗号技術のテストを行う。
後半の段階では、現行のセキュリティ技術と量子耐性の代替技術を並行運用し、その後、ネットワーク全体の移行を推進する。
計画には、量子技術の進展速度が想定よりも早く進む場合に備えた緊急対応ルートも含まれており、攻撃者が旧暗号技術を悪用する前にネットワークが対応可能な仕組みとすることを目指している。
XRP Ledgerはすでにアカウントを変更せずに制御鍵を交換できる機能を備えており、Rippleは将来的な移行を容易にすると説明している。ただし、独立するバリデーターはトランザクションルールの大幅な変更に際して連携が必要である。
Akinyele氏は「このアップグレードは暗号アルゴリズムを単に別のものに切り替えるだけではなく、より柔軟なインフラや強化された鍵管理、明確なアップグレード経路、そして金融活動を妨げることなく進化できるシステムが求められる」と述べた。
量子セキュリティへの緊急性は、AIシステムが暗号脆弱性の探索に活用され、研究者が以前より短時間で解析を行える可能性が高まったことに起因している。
この状況は金融ネットワークにとって新たな課題も生み出している。量子コンピュータ耐性のシステムは、AI支援による迅速かつ低コストな攻撃にも耐える必要があるのだ。
Akinyele氏はAIと量子コンピュータは別技術だが、金融インフラの同じ方向性への推進力になっていると説明する。
「AIは自動化とより自律的な経済活動を推進し、一方で量子コンピュータはこれらのシステムの安全性をさらに先読みする必要性を産業に突き付けている」と語った。
この変化は、AIエージェントが人の承認なしに取引や支払いを開始する決済分野でも既に進行している。
Akinyele氏は「金融サービスではAIエージェントによる自律的な取引や課金が進行中であり、その結果、24時間稼働しインターネット上で機能する決済インフラに新たな要件が生じている」と述べた。
こうした動きは、BitcoinやEthereumの開発者が今週、それぞれのネットワークで現在用いられているデジタル署名を量子コンピュータ耐性のものに置き換える計画を示した中で浮上している。
課題は新たな暗号を見つけるのみならず、金融ネットワーク規模で機能し、既存のハード・ソフトウェアに適合し、多数のユーザーが安全に移行できる十分な準備期間を確保することである。
Akinyele氏は「作業着手が早ければ早いほど、脅威が現実となった際にネットワークに複数の選択肢が残る」と述べるとともに、
「最終的な移行は危機対応ではなく計画的かつ秩序立ったものとすべきだ」と強調した。
